第1 設問1
XらはYとの間で甲土地の売買契約を締結したから、甲土地はX1とX2の「共有」(民法249条~)に属すると解する。そして、本件訴えの訴訟物は上記売買契約(555条)に基づく所有権移転登記請求権と解する。
ここで、上記のように甲土地はX1、X2の共有に属すと解するが、本件訴えは、Xらが共同しなければ「当事者」(民訴法115条1項1号)として適格が認められない固有必要的当事者訴訟となるか。固有必要的共同訴訟となるかは、訴訟物の管理処分権の帰属等の実体法的観点と紛争の統一的解決という手続法的観点で考えるべきである。
本問では、上記訴訟物たる「債権の目的がその性質上~不可分である場合」(民法428条1項)といえるので、「各債権者」X1、X2は「すべての債権者のために履行を請求~できる」。とすると、本件訴訟物の管理処分権は、X2単独に帰属するといえるので、本件訴えは固有必要的共同訴訟ではない。本件訴訟物という「訴訟の目的である権利~が」(民訴法38条前段)上記売買契約という「同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき」といえるので、本件訴えは通常共同訴訟である。
またここで、通常共同訴訟は別々の訴えを便宜的に共同訴訟としたにすぎないため、共同訴訟人独立の原則(39条)がとられている。よって、「共同訴訟人の一人」たるX1に「ついて生じた事項は、他の共同訴訟人」X2に影響を及ぼさない。
X1がYに訴状が送達される前、つまり訴えが係属する前に死亡してしまったため、X1のYに対する訴えは「当事者実在」という訴訟要件を欠くことになるため、却下される。しかし、X1に生じたその事項は共同訴訟人独立の原則からX2に影響を及ぼさない。
よって、X2は本件訴えの手続きの続行を主張すべきである。
第2 設問2
本件訴え(前訴)の確定判決は、「主文に包含するもの」に限り、「既判力」を有す(114条1項)。
後訴裁判所は上記既判力により確定された事項を前提に判断しなければならず(積極的作用)、これと反する当事者の主張・証拠の申し出を排斥しなければならない(消極的作用)。
これは①紛争の蒸し返しを防止するためで、②前訴での当事者への手続き保障により正当化される。
とすると、「主文に包含するもの」とは訴訟物と解する。①当事者が審判を求めた訴訟物に既判力を認めれば紛争の解決ができ、②前訴で訴訟物を焦点として攻防を尽くした当事者への手続き保障も十分だからである。
また、訴訟物たる権利は時の経過とともに変動しうるので、基準時とは事実審の口頭弁論終結時と解する。①裁判所はそれまでの資料を基礎に終局判決を下し紛争を解決し、②当事者もそれまで資料を提出する機会があるからである。
そこで、①当事者は後訴で前訴基準自前の事由に基づき、前訴基準時における訴訟物の存否判断について原則として争えなくなると解する(遮断効:民執法35条2項参照)。②しかし、前訴基準時前に提出することが期待できなかった事由は実質的に手続き保障を欠くので例外的に遮断されないと解する。
ここで、本件訴え(前訴)の確定判決は、前訴基準時におけるX1らの甲土地についての売買契約に基づく所有権移転登記請求権が存在するとの判断に既判力が生じる。
また、本問でYの代表取締役Bは前訴の口頭弁論終結前に、甲土地について処分禁止の仮処分がされていないことを奇貨として、強制執行を免れる目的で、Bの息子Zと通謀し、YからZに対する贈与を原因とする所有権移転登記手続きをした。とすると、Zは前訴の当事者Yと同視できると解する。そうすると、Zは後訴で前訴基準時前の事由に基づき、前訴基準時における訴訟物の存否判断について原則として争えなくなるが、X1らとYとの間の売買契約は成立していないというZの主張は前訴基準時前の事由であり、前訴では、唯一の争点として甲土地の売買契約の成否が争われたうえで、上記既判力が生じたからZの上記主張は前訴基準時における訴訟物の存否判断について争うものといえる。また、唯一の争点として甲土地の売買契約の成否が争われた以上YもZと同様の主張をしていたと解せられるから、Zの主張は前訴基準時前に提出することが期待できなかった事由とはいえない。
以上のことから、上記のようなZの主張は前訴判決によって排斥されるべきである。
以上
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