令和3年予備論文試験再現答案:民法【B評価】

設問1

1 本件ワイン契約(以下「ワイン契約」)について

(1) ワイン契約(555条)の目的物たる本件ワインと同種同等のワインは他に存在しないから、本件ワインは、同契約当事者ABが目的物の個性に着目した特定物である。8月30日未明に火災が発生し、これによる高熱に加え、甲の配電設備の故障によって空調機能を喪失していたことから甲内部は異常な高温となり、これにより、本件ワインは飲用に適さない程度に劣化してしまった。そうすると、社会通念上、BのAに対する本件ワイン引渡し「債務の履行が不能である」(542条1項1号、412条の2第1項)といえる。そのため、「債権者」Aは催告せずに直ちにワイン契約を解除できる(542条1項柱書)。

(2) よって、Aの主張は認められる。

2 本件賃貸借契約(以下「賃貸契約」)について

(1) 8月30日深夜までに配電設備の修理は完了し、甲の空調機能は復旧し、その使用には何ら支障が無くなっている。そうすると、賃貸契約は履行不能に陥っていない。また、ワイン契約と賃貸契約は別個のものであり、契約は相対効しか有しないためワイン契約の履行不能は賃貸契約に影響しないとのBの反論が想定される。

(2)ア たしかに、ワイン契約と賃貸契約は別の日に結ばれた別個のものであり、互いに影響しないのが原則である。

イ しかし、双方の契約が密接に関連する場合に、一方の履行不能が他方に影響しないとなると当事者の合理的意思に反する場合がある。そこで、双方の契約が密接に関連しており、一方の履行不能により双方の契約全体の目的が達成できなければ、もう一方も例外的に解除できると解する。

ウ Aは、Bとのワイン契約の交渉の際に、本件ワインの引渡し日までに高級ワインの保存に適した冷蔵庫を購入し又は賃借することを予定していることを伝えていた。さらに、Aは、Bに対し、適切な規模の冷蔵庫が見つかるまでの当面の保管場所としてBの所有する甲を借りたいと伝えて交渉し、賃貸契約を結んだ。そうすると、賃貸契約はワイン契約の目的物たる本件ワインを保管するためのものだから、双方の契約が密接に関連するといえる。そして、本件ワインの引渡しが履行不能になれば賃貸契約は無意味になるから、ワイン契約の履行不能により双方の契約全体の目的が達成できないといえ、賃貸契約も解除できる。

エ よって、Aの主張は認められる。

設問2

(1)ア(ア) 本件譲渡担保契約(以下「ジョー担」)は、目的物を丙内の全ての酒類とする集合物譲渡担保契約である。

(イ) 集合物譲渡担保は大きな担保価値があるため、社会的需要があり、また占有改定による引渡し等によって法律上排他的に支配できるため、公示の原則や一物一権主義の趣旨に反しない。

(ウ) ジョー担は、目的物が丙という場所にある「アルコール1%以上の飲料」と特定されているから物権の特定性にも反しない。

(エ) そのため、Dの②の主張は失当である。

イ(ア) 丙の酒類は、ジョー担がされ、占有改定(183条)により、そのときの酒類は「引渡し」(178条)がされ、対抗要件が具備された。しかし、本件ウイスキーも含むジョー担後に丙に運ばれた酒類には引渡しがされていない。

(イ) ここで、集合物譲渡担保において、毎回対抗要件を具備するのはわいざつだし、当事者の合理的意思に反する。そこで、集合物の同一性を損なわなければ、新たに集合物の構成部分になった物に対しても、集合物に一度対抗要件を具備すれば対抗力が及ぶと解する。

(ウ) 上記の通り一度対抗要件を具備している。本件ウイスキーはどのウイスキーが本件ウイスキーか判別できる状態にあったものの、丙の他の酒類とともに棚に保管され、ジョー担の目的物たる集合物の同一性を損なわずに新たな集合物の構成部分になったといえる。

よって、本件ウイスキーも含むジョー担後に丙に運ばれた酒類にも対抗力が及ぶ。

ウ よって、Cはジョー担の有効性について第三者に主張できる。

(2) ジョー担は当事者ACが目的物譲渡の形式をとった以上、その意思を尊重して、目的物の所有権はCに移ったと解する。また、Cは担保目的を超えて権利行使しないという債権的制約に服する。

そうすると、本件ウイスキーは搬出されずにある以上、ジョー担の効力が及び、所有権はCに帰属することになる。なお、本件ウイスキー契約(以下、「ウイスキー契約」)で、本件ウイスキーの所有権は代金完済をもってDからAに移転することになっているが、同ウイスキーがジョー担の目的物となり効力が及ぶ以上所有権はCにある。

そうすると、Aは本件ウイスキーについて無権利者であるため、Dは即時取得(192条)による方法しか同ウイスキー所有権を取得できない。しかし、「引渡し」等がされていないため、Dは所有権を取得できない。

よって、Dは、Cに、同ウイスキーの所有権を主張できない。

以上

答案作成時間:約1時間10分

【感想】

設問1は重問に似たのがあったと思います。

設問2の集合物譲渡担保契約も重問にありましたが、今回は難しかったです。

変なことたくさん書いたと思いますが、民法とかはとにかくガシガシ書いたほうがいいとかよくないとか。

でも設問2の小問2はめちゃくちゃだったと思います。。

集合物譲渡担保の有効性は、論パタにあったようなやつを書きました。

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