令和3年予備論文試験再現答案:刑法

第1 甲が本件段ボールを持ち出した行為1に窃盗罪(235条)が成立する。

1 (1) 「財物」とは、財産的価値を有するものをいうところ、同段ボールは、甲の得意先の取引に必要な本件帳簿(以下「ちょうぼ」)が入っていたため財産的価値ある「財物」にあたる。

(2)ア 法律関係が複雑化した現代では、占有自体をひとまず保護する必要があるから、「他人の財物」とは、「他人の」占有する「財物」と解する。

イ 同段ボールはY宅に保管してあったのでYという「他人の」占有する「財物」にあたる。

(3) 同段ボールを持ち出してYの意思に反し、その占有を移転させ、「窃取した」といえる。

(4) 行為態様から同罪の故意(38条1項本文)も認められる。

(5) よって、同罪の構成要件に該当する。

2 しかし、段ボールは甲の物であり、Yから「同段ボール箱を返してほしければ100万円持ってこい」等言われ甲は脅されていた。そのため、行為1は自救行為として違法性そきゃくされないか。

(1) 違法性の本質は社会的相当性を欠く法益侵害にあるから、社会的相当性があれば、自救行為として違法性そきゃくされうると解す。

(2) ちょうぼは脱税の証拠であり、これを発見されないようにするためにYにちょうぼを入れた同段ボールを預けた経緯があるため、行為1は社会的相当性を欠くといえ、自救行為として違法性阻却されない。

第2 甲がちょうぼに火をつけた行為2に自己所有の建造物等以外放火罪(110条2項)が成立する。

1 ちょうぼは、「前2条に規定する物以外の物」(同条1項)にあたる。

2 ちょうぼという紙でできた燃えやすいものをライターで火をつける行為2は、ちょうぼの「焼損」結果発生の現実的危険ある実行行為といえる。

3 これにより(「して」)、火のついた多数の紙片が炎と風にあおられてドラム缶の中からまい上がり、周囲に飛散した。

ここで、放火罪は目的物の燃焼により公共の危険を生じさせる罪であるから、目的物の燃焼とその継続可能性を要する。そこで、「焼損し」とは、火が媒介物を離れて目的物が独立して燃焼し、と解する。

上記の通り、火が媒介物たるライターを離れてちょうぼの紙片が炎にあおられているから独立して燃焼し、といえ、「焼損し」といえる。

4 これに「よって」その紙片が魚網にに触れ、これが燃え上がり、たまたま近くで夜釣りをしていた5名の人が発生した煙に包まれ、その1人の原付自動車に延焼するおそれが生じた。同罪の保護法益は、不特定多数人の生命・身体・財産である。そして、不特定とは、犯行の経緯とは無関係に偶然その場にあるものも含む。上記5人は犯行の経緯とは無関係に偶然その場にいて、原付自動車も偶然その場にあったから、不特定人の生命・身体・財産に「公共の危険が生じた」といえる。

5 (1) 「よって」という文言から、同罪は結果的加重犯と解する。そのため、加重結果発生の認識は不要である。

(2) 甲は上記防波堤は釣り人に人気のある場所であり、普段から釣り人が立ち入ることがあったことを知らず、行為2時も暗かったため上記原付自動車と5名の存在を認識しておらず、「公共の危険」を生じさせる認識がなかったが、犯罪成立には問題ない。なお、ちょうぼは「自己の所有に係る」(115条2項)といえる。

6 行為態様から同罪の故意は認められる。

第3 乙が殺意をもって、Xの首を絞めつけ窒息死させた行為3に殺人罪が成立する(199条)。

第4 甲が乙の行為3を制止せずに立ち去った不作為4に殺人罪の幇助犯は成立せず、嘱託殺人罪の幇助犯(202条後段、62条1項)が成立する。

1(1) 幇助犯の本質は、正犯の実行行為を通じて法益侵害ないしその危険を惹起した点にある。しかし、条件関係まで要求すると幇助犯成立の範囲が不当に狭まる。そこで、幇助行為が正犯の実行行為を物理的・心理的に容易にした関係があれば足りる。

(2) 仮に甲が行為3を目撃した時点で、直ちに乙の犯行を止めてXの救命治療を要請していれば、Xを救命できたことは確実であった。とすると、不作4によって、行為3を物理的に容易にしたといえる。しかし、不作為でも「幇助した」といえるか。

(3) ①作為と同視でき、②不可能を強いない不作為に処罰範囲を限定するために①作為義務違反と②作為可能性・容易性があれば「幇助した」といえると解する。

(4) ①甲宅内には乙以外に甲しかいなかったから被害者Xの生命は実質的に甲の排他的支配下にあった。とすると、甲には、乙に声を掛けたり、乙の両手をXの首から引き離そうとしたりするなどの作為義務があった。しかし、これを甲はしなかったから作為義務違反があった。

② この作為は甲にとって容易に採り得る。また、乙の犯行を直ちに止めることができたのは確実とまではいえなかったものの、可能性は高かった。よって、作為可能性・容易性も認められる。

(5) よって、不作為4は、「正犯」乙の行為3を「幇助した」といえる。

2(1) しかし、甲はそれまでのXの言動から、Xが乙に自己の殺害を頼み乙がこれに応じてXを殺害することにしたのだと思っていたから、嘱託殺人罪の幇助犯の故意しかない。

(2) 故意責任の本質は、規範に直面したのにあえて行為をしたことに対する非難にある。そして、規範は構成要件として与えられているから、構成要件の範囲内で主観と客観が符合すれば故意が認められると解する。

(3) 嘱託殺人罪の幇助犯の主観と殺人罪の幇助犯の客観は、保護法益が人の生命、行為態様が人に対する攻撃という点で共通し、軽い前者の限度で実質的に重なり合っているから、前者の限度で故意が認められる。

3 なお、乙は行為3の際に甲が帰宅したことに気づいていておらず、甲乙間で意思連絡がなかった。しかし、上記幇助犯の本質から正犯の実行行為を容易にした関係があればよく、意思連絡は幇助犯成立には不要である。

第5 第1・2・4の罪は保護法益が異なるので、併合罪(45条前段)となる。

以上

答案作成時間:約1時間13分

【感想】

最後の行まで書けました。

自救行為っぽい事情は、自招侵害みたいに書きたかったのですが、変な書き方になりました。

そんなめちゃくちゃおかしいとまでは思わないので、あまり悪くとらえられないことを祈ります。

公共の危険の書き方もおかしくなりました。

それ以外は大きなミスはまだ見つかってません。

見つけたくないです。

(ただ、故意責任のところで主観と客観を逆に書かなかったが心配です。)

見直しのときに「自己の所有に係る」をあてはめ忘れていたのに気づいたのはよかったです。

(でもそれ以上に刑訴のミスに気づきたかったです。)

乙の殺人罪は超シンプルにとどめました。

たぶんこれでいいと思うのですが。

この辺のメリハリの付け方は重問講座を受けて工藤北斗先生に学びました。

(客観的)構成要件該当が明らかなら端的に認定して、ほかを厚く書くみたいな。

書くことが多い刑法では大切だと思います。

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