設問1
1 本件条件に不満を持つものの、本件許可自体は肯定したいAはどのような訴訟を提起すべきか。
2 同条件は、同許可という行政行為にこれとは別の内容を付加する附款にあたる。そして、同条件と同許可が不可分ならこれらを対象とする取消訴訟(行訴法3条2項)を提起して、可分なら同条件を対象とする取消訴訟を提起すべきである。
3(1) 行政行為と附款が可分かどうかは、その附款がなければ行政行為がされなかったといえるかどうかで判断する。つまり、附款がなければ行政行為がされなかったといえるなら、それらは不可分といえる。
(2) 本件条件を付した背景には、他者搬入・搬出をしていた別の収集運搬業者の積替え・保管施設において、保管料の増加と保管期間の長期化によりPCB廃棄物(以下「PCB」)等の飛散等の不適正事例が発覚し、社会問題化していたことにあった。そして、PCBを含む特別管理産業廃棄物は産廃物のうち「爆発性、毒性、感染性」その他の人の「健康」(憲法25条1項)又は「生活」(同条項)環境に係る「被害を生ずる恐れがある性状を有する」(法2条5項参照)。そうすると、PCBは人の生命身体といった重大で回復困難な利益を害するおそれがある。このおそれがあるPCBが、他者搬入・搬出によって収集・運搬に関する責任の所在が不明確になったり、廃棄物の飛散、流出、異物混入などのおそれがあれば、人の生命等を害するおそれがあるといえる。そうすると、こういったことを考慮して本件条件が付されたと思われるから、同条件は重要といえる。よって、同条件がなければ、本件許可はされなかったといえ、これらは不可分といえる。
(3) よって、Aは同許可と同条件を対象とする取消訴訟を提起すべきである。
設問2
1(1) 本件条件の根拠たる法14条の5第2項、14条の4第11項の「生活環境の保全上必要な条件」という抽象的な文言からB県知事(以下「知事」)の要件裁量が、「できる」という文言から効果裁量が認められる。さらに、同条件の趣旨は「生活環境の保全」にあると思われ、これは法の目的たる1条からも読み取れるため、Bの専門技術的判断を尊重する必要がある。そのため、知事に広い裁量が認められ、これに基づいて付された同条件は適法であるとのBの反論が想定される。
(2) しかし、上記目的は消極目的だから裁判所の審査判断は比かく的容易である。さらに、Aは、B県内のAの所有地に高額な費用を投じ、各種規制に適合する相当規模の積替え・保管施設を設置した。それなのに、本件条件が付されると、当初想定していた事業の効率化が著しく阻害される。そのため、同条件により、Aの財産権(憲法29条1項)や営業の自由(22条1項)という重要な利益が害される。よって、知事の裁量は狭いといえる。
2(1) 本件条件の上記目的は正当といえる。この目的を達成するために同条件は必要最小限の手段であるとのBの反論が想定される。
(2) たしかに同条件の目的は正当である。
しかし、本件申請の内容は本件基準に適合しているため、それでAの施設や能力は充分担保されているから、Aが生命等の利益を害するおそれは小さい。また、同条件は上記の通りAの重要な利益を害するといえる。とすると、まず条件なしで許可をして、問題があれば行政指導して、それでも直らなければ業務停止命令を出せばよいといえ、いきなり同条件を付すのはやりすぎといえる。よって、同条件は比例原則に反する。
3 また、同条件のような内容の条件は近隣の県では付されていない。それなのに、Bでのみ同条件が付されるのは、上記比例原則に反することから不合理な差別といえ、平等原則に反する。
4 よって、同条件は社会通念上著しく妥当性を欠くといえ、裁量の逸脱濫用といえるから違法である(行訴法30条1項)。
以上
答案作成時間:約1時間10分
【感想】
設問1は附款のやつで合ってるでしょうか。
(情報収集してないのでどれを書くべきだったかわかりません。)
附款は重問にもあったし、伊藤塾模試の復習もしてたので、附款のやつだと思って書きました。
「取消判決の効力」は拘束力とか第三者効とか33条あたりを見たけど、「わからん!」と思い、減点をおそれて触れませんでした。
設問2は全体的に答案の粗が多いなと思いました。
明らかに平等原則違反が問われていましたが、「不合理な差別」であることを主張するために比例原則違反から書きました。
信義則っぽい事情に触れられなかったのが悔やまれますが、自分の遅さが原因です。
本試験独特の雰囲気からか
「なんか今回は時間があるぞ」
と思ってたら時間が無くなってました。
設問1をもっとサラッととどめるべきだったと思いますし、何なら(より配点が高そうなため)設問2から書くべきだったとも思います。
でも、欲張らず70分で憲法に移行したこと自体は良かったです。
全体の得点効率を考えると、基本的に70分・70分が適切だと思うからです。
行政法は「わかるけど書けない」というところが難しいんだと思います。
なので、事務処理能力の高さが重要ですね。
初見の法律もたくさんありますし。
改善する方法としては初見の模試・答練や司法試験を解くことでしょうか。
局所的な事情を深く掘り下げられるようになった反面、時間が足りなくなってその他の事情が使えなくなって結果的に得点効率を落として感があり、これが弱点だと思っています。
そのため、多くの事情を使う練習をする必要性が高いと感じています。
それからとにかくパターン化ですね。
ぼくとしては4Sで伝授されたことはやれてるつもり(根拠条文特定からの実体的違法事由の一連のやつ)ですが、それでも間に合いません。
あと、今回は答案の形式にやや凝り過ぎたところがあるかもしれません。
形式はあくまでも時間に余裕がある科目だったり、何を書けばいいかわからないときに大事にすればよく、行政法のように書くことがわかるときは書きなぐるのが得点効率がいいかもしれません。
それに気づくのに今年は書く練習が足りませんでした(でも実際どうするのが得点効率がいいんでしょうね)。
ただ、重問をやることでここ数年の傾向として出題される「一般に手薄になりがちな分野」の対策もしていたので仕方がないと思います。
去年は設問1に泣かされたので。
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