令和元年予備論文試験再現答案:民法【E評価】

第1 設問1

Dの本問請求は、所有権に基づく返還請求(202条1項、200条1項)と構成できるが、これが認められるか。

まずAが平成28年3月15日に「死亡」(882条)し、Aの「子」(887条1項)で、唯一の相続人であるBはAを包括承継(896条本文)したので、本件土地についてもAから相続し、所有権を取得したと解する。

そのBは平成28年6月1日、Dとの間で1000万円を借り受ける旨の金銭消費貸借契約(587条)を締結し、1000万円を受領するとともに、これによって本件債務の担保のために本件土地に抵当権を設定する旨の抵当権設定契約を締結し、同日、Dを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされた。その後、Bが本件債務の履行を怠ったため、平成29年3月1日、Dは、本件土地について抵当権の実行として競売の申立てをした。競売手続の結果、本件土地は、D自らが950万円(本件債務の残額とほぼ同額)で買い受けることとなり、平成29年12月1日、本件土地についてDへの所有権移転登記がされた。これにより、Dは、本件土地の所有権という「不動産に関する物権」の取「得」を「第三者」にも「対抗」できる形で確定的に取得した(177条)。

Cは、平成20年4月1日Aから本件土地の贈与(549条)を受け、同日、引き渡しを受けた。そして、Cは平成20年8月21日までに本件土地上に居住用建物たる本件建物を建築して居住しており、本件建物を所有している。よって、Cは本件土地を本件建物所有により「占有」(200条1項)している。

とすると、Dの本問請求は認められそうである。しかし、Cは上記のとおり本件建物で居住しているため、本件建物を収去するとなれば、生活が困難となる恐れがある。そこで、Cを保護できないか。

たしかに、BD間で上記の金銭消費貸借契約と抵当権設定契約が締結された際、Dは本件建物を所有するCは本件土地を無償で借りているに過ぎないとBから説明を受け、DはCが本件土地の贈与を受けていたことは知らなかった。しかし、念のため、Dは対抗力のある借地権の負担があるものとして本件土地の担保を評価し、Bに対する貸付額を決定した。そして、上記のとおり、Dは競売で本件土地を本件債務の残額とほぼ同額で買い受けたのだから、本件貸金債権のほとんどを回収できているはずである。それなのに、Dが更地の本件土地を手に入れる一方で、本件建物に居住しているCが本件建物を収去しないといけないとなると、CD間の公平を欠く。

そこで、Cは本件建物に居住後の平成20年8月31日に本件建物についてCを所有者とする保存登記をしたので、借地借家法の規定を類推して、本件土地所有者Dという「第三者」(10条1項)に「対抗~できる」「借地権」(2条2号)を有するとして、CはDに対抗できると解する。

よって、Dの本問請求は認められない。

第2 設問2

CのDに対する本問請求は所有権に基づく妨害排除請求(202条1項、198条)と構成できるが、認められるか。

第1のとおり、CはAから本件土地の贈与を受け、引き渡しも受けた。しかし、所有権移転の「登記」(177条)は得ていない。とすると、Cは、本件土地の所有権という「不動産に関する物権」の取「得」を「第三者」に対抗できない。とすると、Dが「第三者」にあたるなら、CはDに対抗できない。

ここで、「第三者」とは、その文言から、当事者及びその包括承継人以外の者で、不動産取引の安全という177条の趣旨から「登記」の不存在を主張する正当な利益を有する者と解する。

Dは本件贈与契約の当事者AC及びその包括承継人以外の者である。

また、Dは第1にある通り、本件土地の所有権を包括承継したBと消費貸借契約を結んだうえで、本件土地につき抵当権を設定するとの契約をした。とすると、DはCの本件土地の所有権移転登記の不存在を主張する正当な利益を有する「第三者」にあたる。よって、CはDにその所有権取得を対抗できない。

以上のことから、CのDに対する本問請求は認められない。

                                     以上

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