設問1
1
Aの両親がAを監督することでVやWなどの「罪証」を威迫して「隠滅」(刑訴法207条1項本文、60条1項2号)させないようにすることや「逃亡」(同3号)しないようにすることを示せると考えた(ⓐ)。Aが勤務先で不可欠な人材であることを示すことで「逃亡」しないことや勾留の必要性(87条1項参照)がないことを示せると考えた(ⓑ)。
2
(1)ア 「罪証~隠滅~理由」(60条1項2号)は罪証隠滅の対象(ⅰ)、態様(ⅱ)、客観的可能性(ⅲ)、主観的可能性(ⅳ)から判断する。
イ Wは、Aの犯行を目撃している(②)ため、Aの犯人性についての「罪証」として重要である(ⅰ)。Wは通勤に使っている車をKに止めている(②)ことから、Kを頻繁に利用していると思われる。また、AとWはすれ違っておりその際にAもWを見てWの顔を覚えてる可能性が高い。そうすると、AがKで待ち伏せしてWを見つけて、脅して供述を自己の有利に変えさせる客観的可能性が高い。なお、Aの父は70歳・Bの母は65歳と高齢であるため、35歳で169㎝・体重80キロという30歳以上若くしっかりした体型のAを監督する能力は乏しい(ⅱ、ⅲ)。Aは「全く身に覚えがない」と犯行を否認しており、アリバイがあったことも主張している(⑫)。本件事件により被害車両は車体全体が焼損しており、その車両の両隣の車両や、隣接する一戸建てにも延焼する可能性があり(④)、被害が重大といいうる。そうすると、この罪から逃れようとする意識が強く働くといえる。そのため、主観的可能性も認められる(ⅳ)。
ウ よって、「罪証~隠滅~理由」が認められる。
(2)Aは昨年12月から自動車販売の営業の仕事をしている。しかし、今の仕事について1ヶ月ほどと短く、また貯金がほとんどなく生活は楽ではない。そうすると、Aの生活基盤は安定していないといえる。さらに、Aは30代と比較的若く、結婚歴はなく、一人暮らしをしており、自宅から車で10分のところに住む両親は健康を害したことがないからAによる世話の必要性は小さい。そのため、Aは身軽であるといえる。よって、Aが「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」も認められる。なお、上記(1)イと同じくAの両親にAの監督能力は乏しいし、今の仕事歴が短いため代替可能要員だから「逃亡」しないと言えない。
(3)上記のようにAは代替可能要員だから、勾留の必要性がないと言えない。
設問2
1 本件事件が起きたのは午前1時ごろという暗い時間帯である。しかし、Kの入り口付近に街頭が1本あり、敷地に照明が4本あった(④)。そのため、現場は明るく観察しやすかったといえ、この点でW供述は信用できる。
2 短めの黒髪で眼鏡を掛けていない30代の男という同じ特徴の者20名(⑧)から、Aを犯人に間違いないと断定し、眉毛が太くてたれ目という特徴も述べている(⑨)。この点でW供述は信用できる。
3 この信用できる⑨の供述で、AとWは面識がないとWは言っており、その他にAWの面識がある事情はないため、実際に面識がないのだろう。とすると、WはAを陥れる動機がないため、W供述はこの点で信用できる。
4 ②の供述は事件直後にされいてるから新鮮な記憶に基づく。さらに、Wが目撃した犯人の特徴である白いレジ袋を持って、胸元に白で「L」と書かれた黒っぽいパーカーで黒っぽいスラックスをはいていたというのは、⑦に書かれた白いレジ袋を持ち、胸元に「L」の白い文字が入った黒っぽいパーカーを着て、黒っぽいスラックスを履いた人物と一致しており、さらに⑪のA方にあった胸元に白で「L」と書かれた黒地のパーカー、黒に似た紺色のスラックスというのも一致している。そのため、②の供述は信用できる。
5 Wは、犯人の男が顔を上げ男と視線が合ったので、そのときはっきりと顔を見ることができた。また、放火犯人の顔をよく見ておかなければならないと思っていたため、意識的に男を観察していたといえる。さらに、すれ違いざまに男の顔を間近で見たので観察条件も良かった。この点からもWの供述は信用できる。
6 Wの視力は左右ともに裸眼で1.2であり、色覚異常も認められないため、この点でもWの供述は信用できる。
7 眉毛が太く、垂れ目(⑧)、身長169㎝(⑬)という特徴は、Wの言う眉毛が太く、垂れ目、170㎝くらいと一致する。この点からもWの供述は信用できる。
8 以上から、W供述の信用性が認められる。
設問3
1 Wは、「Aは人のバイクを放火するような人間なので、復しゅうが怖い。Aに見られたら証言できない」と言っているため、「証人」Wの「心身状態、被告人」A「の関係その他の事情により、承認が被告人の面前~において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある」といえ、「相当」ともいえる(157条の5第1項)。よって、まずAとWとの間の遮へい措置を採ることにした。
2 Wは人前で話すのも得意ではないので、傍聴人にも見られたくないと言っている。しかし、それくらいでは「心身の状態~その他の事情を考慮し、相当」と認められない(157条の5第2項)ので、傍聴人との間の遮へい措置は不適切と考えた。
3 ビデオリンク方式は「映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する」(157条の6第1項参照)ものなので、Aに見られたら証言できないとするWには不適切である。
4 よって、AとWとの間の遮へい措置のみを採るのが相当と判断した。
設問4
証人尋問では、証人は記憶に基づいて陳述しなければならず、その「供述に不当な影響を及ぼすことのないように注意しなければならない」(規則199条の11第2項参照)。そのため、「許可」(199条の12第1項)をする前に、このような影響を及ぼすおそれのある本件記号などが消されているか「釈明」(208条1項)を求めた。
以上
【感想等】
本問の設問2を書いているときにわかりすぎて手が震えたのは良い思い出です。
「ぼくこのまま下手をこかなければ受かるぞ。。」
って。

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