令和元年予備論文試験再現答案:商法【C評価】

第1 設問2

Dの立場において考えられる主張

平成31年4月22日、Bが全株式を有し代表取締役を務める乙は、 Dが全株式を有し代表取締役を務める丙との間で、本件分割を行い、これにより、乙が有する甲株式40株を全て丙に承継させた。甲の定款には、譲渡による甲株式の取得について甲の取締役の承認を要する旨の定めがあるため、「株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合」(134条柱書)にあたるが、「株式取得者」(同条4号)丙が本件分割という「一般承継により譲渡制限株式を取得した者」といえる。そうすると、甲「株式」を甲「以外の者から取得した者」にあたるから甲に対して株主名簿の名簿書き換え請求ができる(133条1項、2項)。とすると、その請求に対してCが甲を代表して本件会社分割による甲株式の取得が甲の取締役会の承認を得ていないことを理由にこれを拒絶したのは不当である。よって、本来なら甲株式の譲渡は株主名簿に記載されたなければ甲に対抗できない(130条1項)が、信義則上(民法1条2項)丙は甲に株式の取得を対抗できると解する。

そうすると、本件株主総会においてDが丙を代表して丙が本件会社分割により取得した甲株式40株について議決権を行使して当該議案につき反対する旨の主張は有効である。それなのに議長Cが、これを認めず、行使された議決権60個のうち40個の賛成があったとして、Dの取締役から解任する旨の決議の成立を宣言したのは、取締役Dという「役員を~解任する株主総会決議は、~出席した~株主の議決権の過半数~を持って行わなければならない」という341条に反する。

よって、本件「株主総会」(831条1項1号)の「決議の方法が」341条という「法令~に違反し」たといえるので、「株主」(同条同項柱書)Dは、本件「株主総会~決議の日」令和元年5月10日から3ヶ月以内に、「訴えをもって当該決議の取り消しを請求することができる」。

Dの主張の当否

Dの主張は適切である。

なお、有効な議決権(105条1項3号)の40%を認めなかったため、「違反する事実が重大でな」いとはいえないし、認められなかった議決権の行使が認められていたら60対40でDを取締役から解任する旨の決議は反対多数で否決されていたので「決議の結果に影響を及ぼさないもの」ともいえないので、裁量棄却されない(831条2項)。

第2 設問1

Dの立場において考えられる主張

Dは「特別の利害関係を有する取締役」(369条2項)にあたらない。よって、本件取締役会決議は無効である。

Dの主張の当否

否である。

「特別の利害関係を有する取締役」とは決議の結果につき、会社の利益と矛盾衝突するような個人的利害関係を有する取締役と解する。本件取締役会決議はDの取締役からの解任を目的とする臨時株主総会の開催をするかどうかを決するものであり、Dは公正な議決権の行使が期待できないため、Dは「特別の利害関係を有する取締役」にあたる。

よって、そのDが本件取締役会決議の議決に参加できなかったことは何も問題ない。

                                     以上

※この記事を読んでる人は下記記事も見てます。

令和元年予備論文試験の成績通知が届きました。【一片の悔いなし!】