設問1
受訴裁判所は、本件事故によるYの人的損害の発生を認めるに足りる証拠はなく、Yは本件事故による物損について損害額全額の支払いを受けているからYの損害はすべて補填されたとの心証を形成している。
よって、本訴の訴訟物たるXのYに対する本件事故による損害賠償債務は存在しない。
よって、受訴裁判所は本訴について請求認容判決をすべきだ。
本訴判決の「既判力」は、基準時(口頭弁論終結時)の「主文に包含するもの」(114条1項)、つまり上記訴訟物が存在しないとの判断に生じる。①当事者が審判を求めた訴訟物に既判力を認めれば、紛争解決ができ、②訴訟物を焦点として攻防を尽くした当事者への手続き保障も充分だからだ。
設問2
前訴判決の一部たるYのXに対する反訴についての「確定判決」は、上記と同じく訴訟物の存否判断に「既判力」が生じる。
後訴裁判所は、この既判力によって確定された事項を前提に判断せねばならず(積極的作用)、これと反する当事者の主張証拠の申出を排斥せねばならない(消極的作用)。①これは紛争の蒸し返しを防止するためで、②前訴での当事者への手続き保障により正当化される。
ここで、当事者は審判対象を特定できるし(処分権主義:246条1項)、試験訴訟の必要も否定できないので、一部請求は認められる。ただし、原告の恣意で訴訟物を分断できるとすると、被告に重複応訴の負担がかかる。そこで、原告が一部請求である旨を明示した場合にのみ被告が残債務不存在の反訴を提起して紛争を一回的に解決できるからその一部が訴訟物になると解す。
Yは本件事故による損害賠償請求の一部請求として500万円を求めるとしているから一部請求である旨を明示したといえ、この500万円が訴訟物になる。
訴訟物たる権利は時の経過とともに変動しうるので、事実審の口頭弁論終結時を基準時とすべきだ。①裁判所はそれまでの資料を元に終局判決を下して紛争を解決し、②当事者もそれまで資料提出の機会があるからだ。
とすると、本件反訴は棄却されたから、前訴基準時における500万円の損害賠償請求権が存在しないとの判断に既判力が生じる。
そして後訴は本件事故による損害賠償請求の残部請求として300万円を求めるものだからこの既判力に反しない。
この300万円損害賠償請求権は前訴判決後に生じた各症状・後遺症に基づくものだから、残部を求める後訴は②前訴で審理されていないし、①前訴紛争の実質的な蒸し返しといえず、前訴紛争が解決したというXの信頼を裏切るものではないから、後訴の残部請求は訴訟上の権能濫用として信義則に反する(2条)とは言えない。
よって、この点でご訴の残部請求は認められる。
また、前訴判決の一部たる本訴判決は上記の通り既判力が生じる。
とすると、残部請求をする後訴は既判力に反するとも思える。
しかし、上記の通り残部を求める後訴は②前訴で審理されていないため手続き保障が十分とはいえず、①前訴紛争の実質的な蒸し返しとはいえないから被害者保護のために信義則上後訴の残部請求は認められると解すべきだ。
【感想】
全体的にめちゃくちゃ。
判例をまったくといっていいほど知らなかったため、一切言及しなかった(できなかった)。
判例はなんとなくこうかなみたいなのもあったけど、間違いだったら積極的に減点されるおそれがあったので、それなら加点されなくても減点がないほうでという判断。
設問1は問題文の2段落目1~3行目も書くべきだったと思うけど、たぶん書いてない。。
答案と配点のバランスは悪い。
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